このゲームはホラー、サスペンス、非日常、不条理等に彩られた「恐怖」を
題材にした13本のオムニバスストーリーで構成されている作品で、その殆どが
救いようの無い結末を迎えるという、はっきり言って後味の悪いゲームだ。
TVで言えば「世にも奇妙な物語」に近い雰囲気を持っている。
おまけに途中で出てくる選択肢で正解以外のものを選ぶと即ゲームオーバー
という、正直システム的にはクソゲーと言わざるを得ない。

が、それでもこの作品のストーリー1つ1つがもつ強烈なインパクトと
世界観にのめり込んでついつい先が気になって読んでしまう。
(中にはショボすぎるストーリーもあるけど…)

現在ではニコニコ動画に11本分の話がアップされており、前述のクソな
システムを味あわずに最後まで読めるので、ノベルものが好きな人は
サクサク読めるのではないだろうか。

以下、ストーリー紹介と個人的レビュー。

・女嫌い
http://www.nicovideo.jp/watch/sm568652
あらすじ:
大学生の主人公は夜な夜な枕元に老婆が現れる夢にうなされていた。
そして目覚めると何故か台所で寝ている。夢の中の老婆は誰なのか。
そんな中、主人公に好意をよせるクラスメイトの女が現れて…。

感想:
途中で所構わず出てくる老婆がシュールすぎて逆に笑える部分もあるけど、
最後のどんでん返しと後味の悪さはトップクラス。


・雨に泣いている
http://www.nicovideo.jp/watch/sm535757
あらすじ:
雨が激しく降る夜、主人公とその恋人は道端で不思議な生き物を拾う。
家に持ち帰り、物珍しげに見ていたが、やがて奇妙な感覚が…。

感想:
音楽が良くてストーリーに溶け込んでいる、正にサウンドノベルの持ち味を
存分に活かした作品。他のレビューでも書かれているが、最後の一文がとても響く。


・ラミア
http://www.nicovideo.jp/watch/sm305664
あらすじ:
小学生の主人公、香穂は母親と二人暮し。しかしその母親も現在は入院している。
ある日、香穂は何でも願いを叶えてくれるという占いゲーム「ラミア」の
話を耳にする。母親思いの香穂は「ラミア」に病気をなおしてもらおうとする…。

感想:
主人公が健気なだけに辛いストーリーで、後味の悪さも一級品。


・闇に舞う雪は
http://www.nicovideo.jp/watch/sm499637
あらすじ:
失恋の絶望感から飛び降り自殺した妹の復讐を果たすため、主人公は
妹の恋人が乗っているスキー旅行のバスに乗り込んだ。
しかし思わぬアクシデントが起きて…。

感想:
愛情、憎悪など心理面でのドロドロした部分を描いており、それが
壮絶な復讐の連鎖の中で渦巻いて清清しいほど鬱になれる作品。


・仮面
http://www.nicovideo.jp/watch/sm396945
あらすじ:
10歳の主人公は夜更かしして母親に怒られる。
「0時を過ぎても起きてると仮面人にさらわれるわよ」
幼い頃よく聞かされた仮面人。そんなのいるわけないと思いながらも
次第に0時が近づくと不穏な空気が…。

感想:
主人公の年齢からしてストーリーが子供向けで、13本の中ではハズレな部類。
モールス信号みたいなBGMは耳に残る。


・今昔鬼譚
http://www.nicovideo.jp/watch/sm352105
あらすじ:
山奥の村に住む主人公は、夏休みの間だけ都会から村に来ていた丹羽くんと
一緒に村の長老的存在の六助じいさんのところへ遊びに行く。
そこで六助じいさんは二人に「昔本当にあった」という話を聞かせ始めた…。

感想:
一見、王道的なミステリー殺人事件を展開するが…。
オチを気にしなければ過程はある程度は楽しめる。


・RUNNNER
http://www.nicovideo.jp/watch/sm321911
あらすじ:
しがないセールスマンの主人公は今日も取引ゼロの営業に溜息をつく。
宿に泊まる金もなく、車で深夜の山道を走っていると…。

感想:
本当にあった怖い事だろうけど、殆どギャグにしかみえないネタ系のストーリー。
他のシナリオで荒んだ心を和らげる一服の清涼剤のような役割を果たしている。


・節制
http://www.nicovideo.jp/watch/sm351062
あらすじ:
大学生の主人公は身に覚えの無い食費の出費に悩まされていた。
そんなに贅沢してないはずなのに何故か食費はかさむ一方。
このままではいけないと、主人公はカップラーメンのみの生活を始める…。

感想:
RUNNNERと同じく完全にネタ系。バカバカしいが、どこか笑える。


・羽音
http://www.nicovideo.jp/watch/sm307191
あらすじ:
高校一年生の主人公、多恵子は学校で執拗ないじめを受けていた。
いじめは次第にエスカレートし、無理矢理ゴキブリを食べさせられてしまう。
以来、多恵子は体内に異様な感触と羽音が響きはじめた…。

感想:
13本のシナリオの中ではダントツにダークな話。ニコ動の再生数と
コメント数が他のシナリオと比べて桁違いであり、黒ノ十三という
ゲームを象徴するシナリオとなっている。個人的には後述の「運命の扉」が
一番印象に残っているが、この「羽音」もかなりキている。
ストーリー、グラフィック、効果音共に生理的嫌悪感しかないので
Gに耐性の無い人は見ないほうが無難。


・運命の扉
http://www.nicovideo.jp/watch/sm337056(前編)
http://www.nicovideo.jp/watch/sm338655(後編)
あらすじ:
三人の少年はクラスメートの少女からからかい半分でコンパクトを奪い取った。
少女は必死に取り返そうとするが少年達は鮮やかな造形のコンパクトに
目を奪われ、聞く耳を持たなかった。
場所は変わり、とある銀行では三人の男達が今まさに銀行強盗をおこしていた。
金を奪い、車で逃走した男達は少年達がやりとりしている場所までやってきた…。

感想:話のボリュームは全シナリオ中トップで、2つのストーリーが同時に
展開していく。この2つのストーリーは序盤とラストで交差するが、その
悲惨さと皮肉さが強烈な読後感を残した。個人的に一番記憶に残ったシナリオ。


・彼女の図書館
http://www.nicovideo.jp/watch/sm316588
あらすじ:
中学生の千里は煩わしい人間関係に嫌気を感じ、登校拒否となっていた。
人との関わりを拒絶して、自分の居場所を求めているうちに、必要以上に
干渉してこない初老の紳士が運営する図書館で働き始めた。
そこで千里は不思議な生き物たちと出会う。

感想:全シナリオ中、唯一結末に明るい希望が持てる作品。
「黒ノ十三」というゲームの中ではむしろ異端だが、このシナリオを
最後に読めば黒ノ十三って良ゲーかも、という錯覚に陥る事ができる。



ちなみに後、動画アップされてないシナリオに「殺し屋」と「鉄橋」
というのがあるがシナリオ的にはどっちもイマイチ。
(「殺し屋」のほうはハードボイルドな雰囲気と笑えるバッドエンドは
けっこう好きだけど)

特に「鉄橋」はこのゲームを監修している綾辻行人氏のシナリオで、
ゲームでは一番最後に出てくるのに、話はつまんない、その話も
既存の小説をゲーム用に写しただけ、このシナリオまで行くと
過去のシナリオが見れなくなるという、黒ノ十三をクソゲーに
至らしめる罠が張り巡らされているというオチだったりする。

個人的には「運命の扉」「闇に舞う雪は」「雨に泣いている」がベスト3。
みなさんも秋の夜長に1冊いかがだろうか。
こんな長文、最後まで読んだ人なら活字に抵抗ない人だと思うので。 

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